店舗を持たない一人起業は即座に意思決定ができてリスクを最小限に抑えられる
一般的に店舗を持たない一人起業の場合は自己資金も必要経費も最小限に抑えられ小回りが利いてリスク抑えた経営ができます。
その反面、店舗を持つ場合には従業員を雇わない場合であっても数百万円~数千万円の開業資金の他に資格が必要になるケースもあり、開業後も家賃や仕入れといった資金繰りに悩まされることがあります。
一人起業にも成功パターンと失敗パターンがある
起業8年目の私の実体験を始め現状の仕事の状況、美容院を10年以上経営している友人の一人起業の成功パターン、そして赤字のまま5年以上も手芸教室運営を続けている知人の失敗パターンについても触れていきます。
共通して言えることは一人起業の場合は儲けも少ないのですが、シビアな判断さえできれば失敗しても返せないほどの大きな借金を抱えることがないのが特徴です。
これはやはり一人で即座に決断できるということが大きいと思います。共同経営者が2人以上いたり従業員がいれば経営に対する方向性が違ったり、時には気持ちが大きくなったり、傾きかけても尚、一人に比べれば経費も余分に係るうえに意思決定が遅れ、下手をするとそのことで大きな痛手を負いかねないからです。
それでは一人起業の成功パターンと失敗パターンを見て行きましょう。
WEB系フリーランスは成功しやすいパターン (経費が抑えられるので )
必要なのは作業スペースとパソコンのみ
Web系フリーランスに必要なのは作業スペースとパソコン、それにインターネットが使える環境のみです。
家では作業が捗らないという方は物件を借りてもいいですし、Wi-Fiのあるカフェやコワーキングスペースで仕事をすることもできます。
賃貸物件を借りるにしても基本的にPC作業は一人で行うので大きな店舗は不要ですから、マンションやアパートの1室で作業をすることも可能で毎月の家賃も低く抑えることができます。
フリーランスの固定費は驚くほどに少ない
自宅で作業するフリーランスであれば、費用は最小限に抑える事もでき必要なのはPC代金(10万円~30万円前後)と毎月のネット使用料(プロバイダ料金で月数千円から1万円)、サイト運営者であればそれにサーバー料やドメイン代も必要にはなりますが、年間1万円~2万円前後でサイト運営は可能ですから、店舗の開業を伴う起業とは違い毎月の固定費も少なくすみます。
■ PC代金(10万円~30万円前後)
■毎月のネット使用料(プロバイダ料金で月数千円から1万円)
■サイト運営費(サーバー料:年間1万円~2万円前後・ドメイン代:年間千円前後~)
実際にはこの他に記事を書く際に必要となる取材費・旅費交通費の他に人によっては家賃・電話代などの通信費等といった経費も必要になりますが、いずれにせよ店舗を構える必要のある起業とは違い、初期費用並びにランニングコストが少なくて済む利点があります。
人と関わらないフリーランスは自由気まま
はじめての起業でWeb系フリーランスになった人の話を聞くと自由な反面、孤独であること、そして仕事も自分で営業してとってこなければならいことから収入が不安定で物件を借りられるだけの金銭的・精神的余裕もなく自宅の一室で仕事をしているという人もいました。
この方はサイト作成の打ち合わせなどは、客先で行うか近所のカフェで済ませているとのことでした。
確かにフリーランスは店舗を構える起業とは違って自由ではありますが、収入の変動も大きくかなり不安定ではあります。
しかし、私のように元々会社員をしていて、最初の起業が飲食店で、6年目に交通事故に遭いフリーランスに転身した者にとってはWeb系フリーランスほど楽な職種はありません。
飲食店経営の場合は、店に出れば休む間もなく働いて定休日でさえも残務処理をするために店に行く必要もあったり、家賃・水道光熱費・仕入れなどの毎月の経費も高額で最初の1~2年は資金繰りが大変だった経験を経ていたので初めてフリーランスとして起業する人に比べると、ほとんどの事は何てことのない些細なことに感じるのです。
また、現在はまだ交通事故の後遺症が残っており以前のようには体も動かず、痛みが強い日には痛み止めを飲んで1日中寝て過ごすことさえあり、フットワークも悪いため、会社員のような仕事に就くことはできないのですが、Web系フリーランスならば仕事を選ぶこともできますし、私の場合は自分の体調が良い日にだけサイトの更新作業等をすればいいので、他人に気を使うこともなく自分のペースで働けますから気楽なのです。
ただやはり体と相談しながら働く事になるため、無理しない程度の作業量になってしまうためその分収入が少なくなってしまうことはあります。
同じフリーランスでも、労働者的な働き方を選んだ人は客先にエンジニアとして常駐してまるで会社員のような働き方をしている人もいますが、頭脳労働中心の働き方をすれば好きな時に集中して効率よく稼ぐことも可能ですから後遺症があるものの収入を得られるというのはフリーランスならではの強みだと思います。
フリーランスの収入は働き方次第
フリーランスとして働いている人の一般的な年間収入は数百万円から1千万円前後ですが、仕事のない人は0円ですし、メディア運営で成功している人だと年間数千万円を超える収入の人もいます。
何故ここまで収入に差が開くのかといいますと、メディア運営で成功している人は1か月のサイトのPVが100万以上もあって、上手く広告の運用をすれば大きな利益がもたらされる仕組みだからです。
フリーランスの中には自分のメディアの広告事業に力を入れず、寄稿のみで生計を立てている人もいますが、この場合は、記事を仕上げて寄稿先に渡してしまうため、自分の名前を売るにはいいのですが、資産にはならないことから労働者のような働きになってしまいます。
この働き方だと余程名のある方でない限り、年間50記事以上書いたところで収入は良くて200万円前後で頭打ちになってしまいますから決して割のいい仕事ではないと言えます。
ただし寄稿先が複数あればGoogleのアップデートの影響によるリスクも分散されますから、自分のメディア運営のみで生計を立てている人のように順位変動でいきなり収入が激減するといった心配はありません。
こういった感じでフリーランスは自分で仕事を選んで稼ぐため、収入やリスク面においても人それぞれといった感じになります。
ただ収入が余りに少ないと生活できませんから、中にはフリーランスを辞めて企業に再就職する人もいます。
他人に気を使うこともなく気楽な反面、一人で全て考えなければならないこともあって甘い世界ではないことは確かです。ですからフリーランスになるには会社勤めの間にしっかり力を付けてからにした方がいいです。
美容院の一人起業で成功した友達のパターン
次は美容院の一人起業で成功した私の学生時代からの友人の話です。
その友人は以前は某一部上場企業の経理事務をしていたのですが、数年後に突然美容師を目指すと言い出し、その後美容院に勤めながら美容学校に通い美容師免許を取得して独立しまして、もう10年以上が経ちます。
本来なら美容院は一人起業するにしても早い段階で見習いの従業員を雇った方が効率よく仕事ができると思うのですが、友人は一人の方が気楽だからとずっと一人で働いています。
売上を重視すれば見習いを雇って、美容師である経営者がカットしている間に次のお客様のシャンプーやカラーなどを見習いに担当してもらえば、一人で対応する場合と比べ2倍~3倍のお客様を捌けますが、一人だと完全予約制にして一人でシャンプー・カット・カラー・ブローまで行わなければならず、とにかく時間もかかって下手すると1日4人前後のお客様しか対応することができないのです。
しかし、美容院の経営は一人起業でも十分成り立ちます。
美容院は原価率が低く利益が大きい
美容院は一人当たりの売上が高い割に仕入がシャンプー・トリートメント・カラー剤・パーマ液くらいで、これらは原価率にしてわずか10%程度なんですよね。
カットやカラー、どの施術にせよほとんど技術代として儲けが残る訳ですから、 1日3人~4人しかお客様が来なくても十分に利益は確保できます。
カットも一人4,000~5,000円で、さらにカラーやパーマもするとなると一人当たり1万5千円くらいの売上になりますからね。カットのお客様2人とカラーのお客様2人だけの合計4名の予約だけだったとしても1日当たり約4万円の売上になるのです。しかもカラー剤やシャンプー剤などは仕入値が安く粗利率は約90%はありますから1日36,000円もの粗利がでるのです。
月に25日間店を開けるとしたら1ヶ月900,000円もの粗利益になります。
ほぼ技術料だけで成り立っている粗利率の高い美容院は、シャンプー台などの設備費で初期投資は高額になりますが、軌道に乗れば一人でも十分に利益を出すことができ、飲食店などと比較すると早い段階で黒字経営できるようになります。
美容院も一人起業ならば従業員の人件費は必要ないため、1日4人程度のお客様の施術だけで家賃・水道光熱費・広告宣伝費を考えても充分やっていけますね。
私の友人の美容院経営においての悩みの種は「お客様の急なキャンセル」だそうですが、こればかりは、店側はコントロールしようがないですよね。
しかし、これだけ余裕のある商売をしていれば、少しくらい予約のキャンセルがでても安泰な気がします。
教室系で失敗しながら赤字経営している知人のパターン
起業で成功する人もいれば失敗する人もいます。次は起業して以来ずっと赤字続きの女性のお話しです。
実はこの方は飲食店をしていた頃のお客様でして、昔からの友人ではないため過去の経歴等は不明なのですが、話を聞いた感じでは職歴及び経営に関する知識は無さそうでした。
子供の頃から手芸が好きだったらしく、それが高じて手芸教室を始めたらしいのですが、起業以来ずっと赤字続きらしくて、手芸教室用の店舗の家賃を払うために、手芸とは無関係の仕事を4つも掛け持ちしているとのことでした。
仕事を4つも掛け持ちするなんてガッツのある方ですが、そうまでして手芸教室を続ける理由は「生徒さんのため!」ではなくて実は「手芸教室用店舗の初期投資額と今まで払ってきた家賃分を手芸教室の収入で取り戻したいから!」だと聞いて驚きました。
この女性の手芸教室は初年度からずっと5年以上経っても赤字続きで、本人曰く何をやっても効果はなく、元々少なかった生徒さんも年を追うごとに減る一方だとか。
本人は感覚が麻痺しているのでしょうが、誰がどう見ても続ければ続けるほど手芸教室の赤字は膨らむ一方なのです。
本来なら一刻も早く廃業すべきですが、本人は仕事を掛け持ちしてでも続けたいそうなのです。
それなら完全予約制にして自宅の1室で始めれば少なくとも家賃分は浮きますから仕事を4つも掛け持ちする必要はなくなり、その分自分の時間も取れるようになるのですが、意地でも引き続き店舗を借りつつやっていきたいそうなのです。
この女性の場合は完全なる起業の失敗例ですが、それでも廃業は絶対にしないと決めている強い意志には驚かされます。
もう既に手芸教室で1千万円以上の損害をだしているそうですが、その損失分を4つの仕事で補ってどうにか生活しているそうです。
傍から見ていると、そうまでして自分の夢を追うのはどうかと思ってしまいますが、他人が何を言っても無駄でしょうし、友人関係でもないのでこちらもはっきりとは言いずらい面もあります。
手芸教室でも生徒が多ければ同時に複数名に教えることができ、その分多くの受講料収入を得られ経営は上手くいくんでしょうけどね。その為には教え方を工夫する他に人に好かれることも重要になるのでしょうが、教室系の運営は何かと難しそうですね。
商売は運の要素もあるけど会計の知識がない人では経営は難しいという話
成功例・失敗例を改めて考えてみると商売って本人の努力に加えて運の要素もありますが、そもそも経理面のお金の勘定が出来ない人は費用対効果の概念さえなく商売においての見極めや方向性を決めることができないので厳しいものがあるように感じました。
サンクコストに囚われない事が大事
本来ならサンクコストに囚われず、赤字続きで見込みがない事業ならば、どこかで区切りを付けて撤退することも必要なんですがね。それが出来ない人もいる事を知った時には複雑な気持ちになりました。
マーケティングや経営面は学んでおこう!
私や友人は学生時代にマーケティング・経済・簿記会計等全て学び、会社に就職してからは経理を含め経営面においても多少なりとも実務経験を積んでいたため、その辺は数字を見ながらシビアに判断できてきたように思います。
起業自体はやる気があれば誰でもできますが、続ける事は難しいです。私の友人以外でも続けられている人は皆、相当勉強熱心です。
起業に興味のある方は最低でも経営やマーケティングに関しては一通り学んでおくことをおすすめします。
一人起業は始めるのは簡単ですが、根性だけでは長期間乗り切ることのできない厳しい世界ですからね。 冷静な判断も求められますし、それが出来なければ厳しい経営が続くことになってしまいます。